フェスタ サマーミューザKAWASAKI 2012 東京フィルハーモニー交響楽団
15時〜 川崎市教育文化会館
- 東京フィルハーモニー交響楽団(管弦楽)
- ダン・エッティンガー(指揮)
現在の在京オケのシェフの中では、恐らくダントツで最低の稼働率を誇るダン・エッティンガーが、シーズンオフの8月に主催公演でも何でもないサマーミューザの公演で手兵を振る。バランスがおかしくないか、と思うのは私だけではあるまい。ただ個人的には、東京フィルは新星日本響と合併後、出来不出来のムラが酷いことになっていると認識しており、加えてフランチャイズがゴミホールのオーチャードホールと、定期会員とかになる気は全くないので、実害はあまりないとも言えるのである。またエッティンガーに対しても、トーキョー・リングがあんまりいい印象ではなく、コンサートで聴くのは今日が初めてだったりする。
ボロディンもそうだが、特にチャイコフスキーで指揮者の個性が炸裂していた。溜めやパウゼを多用し、聴かせたい楽想やパートを思い切って強調する。テンポのギアチェンジも多く、威勢よくデフォルメをぶちかます様式の演奏で、芝居っ気たっぷりであった。だがしかしオーケストラは意気軒昂であり、管も弦も棒への食い付きが素晴らしく良い。もちろん実演であるから若干の瑕はあったが、解釈の消化不良と感じさせられた箇所は皆無だった。徹底的に自分の音楽をやろうとしたエッティンガーと、それに鋭敏に反応した東京フィルには拍手を送りたい。なにやら爽やかな印象すら受けましたよ。
なおエッティンガーは、チャイコフスキーの前に通訳の女性とマイク片手に登場、チャイコフスキーの交響曲第4番が、昨年4月、震災一カ月後に東京フィルと演奏した曲目であることを喋っていた。被災地(effective areaって言ってたな)から招いた聴衆から手を握られて、よくぞ来日してくれた感謝したいと言われて、自分の方こそ感謝したいと感激したと言っていた。東京フィルとの共演機会は少ないままだが、オケの反応やスピーチ内容からすると、エッティンガーと東京フィル、そして日本の間には、一定の信頼関係が築かれているのではないかと感じた次第である。