モスクワ放送交響楽団
マツーエフは非常にマッシヴな表現で、かの難曲を煽りに煽っていた。ノーミスというわけには行かなかったようだが、凄いテクである。しかしながら、音の粒立ちがブロンフマンに及ばない印象。というかこれは流石に相手が悪いか。多分私の耳は一生、ゲルギエフ指揮ウィーン・フィルが伴奏につけた、あのブロンフマンの実演に呪縛されるのだと思う。呪縛されて本望です。
後半だが、弦楽セレナードとアンコールは本当に大満足。正攻法だが実に丹念かつのびのび(矛盾した表現だが、これは言葉だからこうなるのであります。音楽を言葉で表現するのは土台無理なんですよ。)表現しており、ハーモニーもとても美しい。息もピッタリ。日本のオーケストラには 弦楽器が世界クラスのオケもあると言う人もいる。しかし、世界的に見て決して超メジャーなわけでもないモスクワ放送交響楽団が奏でるこの音色を出せる日本のオーケストラがいるとは、私の経験から考えて、全く思えない。
《1812年》も良い演奏だったが、ちょっと全般にテンポ設定が速かった(冬将軍の辺りとか)と思え、各場面の描き分けも、もうちょっと芝居気出しても良かったのではと思った。まあ単なる好みですけどね。ドンチャン騒ぎの曲であるにもかかわらず、端正に進めるのは見識ではあるし。