東京都交響楽団
- ジェイムズ・デプリースト(指揮)
モーツァルトは溌剌とした演奏。明るく、ひたむきに、躍動感をもって取り組まれており、要らんことは一切しない。よって曲がそのまま生きていた。弦に多少のパラつきはあり、特に、パウゼの後のアインザッツ不揃いが散見されたのは残念だったが、喜悦に満ちた奏楽の前には些末事だと思った。それにしても、本当に、モーツァルトは天才だなあ……。今更だがこの曲は神。
後半のベートーヴェンは、前半の溌剌路線から一転、遅めのテンポと重いリズムで雄大な《エロイカ》を描き出す。大編成で第一楽章コーダのホルン・テーマの中絶がない等、守旧スタイルでの演奏であったが、第一楽章はやや茫洋としていた。ただし楽員は弾いていてとても気持ち良さそう。こちらも、曲が進むにつれてペースをつかみ、何だかんだ言いつつ楽しめた。指揮者とオケの関係性は良好であると思料され、正直都響のサウンドは嫌いではないので、もうちょっと頻繁に行ってみてもいいかなと思いました。
アンコールは、前半の溌剌路線に回帰。すこぶる清新。聴いているだけで幸せ。《エロイカ》もこれで攻めてくれていたらなあ。