不壊の槍は折られましたが、何か?

ミステリ書評家のブログのはずだが……。

NHK交響楽団第1628回定期公演

NHKホール:18時〜

  1. ベートーヴェン:序曲「レオノーレ」第3番op72b
  2. シューマン:ピアノ協奏曲イ短調op54
  3. チャイコフスキー交響曲第2番ハ短調op17「小ロシア」

 変なことを一切しないリットンの指揮の下、NHK交響楽団は非常に丁寧に演奏していました。しばしばバラバラに聞こえる弦も、今日は整っていたと思います。チャイコフスキーでは勢いも出ていて、NHK交響楽団NHKホールでの演奏会としては満足できる部類に入っていたのではないでしょうか。
 ただし、イモジェン・クーパーのピアノは残念でした。遅いテンポで丁寧かつ着実に楽想を彫り込み、シューマンの世界を(内的世界込みで)堪能しようという意図自体は素晴らしいと思います。でも技術的に不安定過ぎるように思いました。オケとの呼吸もなかなか上手く合わなかったような……。弱音部やらカデンツァめいた部分などでハッとさせられる瞬間もあり、悪くないピアニストではあるんでしょうが……。59歳で技術崩壊するのはちょっと早過ぎるので、これは調子が悪かっただけだと思いたい。
 でも今日は、チャイコフスキー交響曲第2番が白眉でした。実演で聴いたのは今日が初めてだったんですが、今これまで、この曲つまんねえなと思っていたんです。でも結局聴き方の問題だったようで、何か深遠なものを表現した音楽ではないと考えて、ハイドンなどと同様に、ユーモラスな音の遊戯として接したら、結構いけます。そのことに気付かされました。まあそれにしても長い(35分)けどね。