パヴェル・ハース・クァルテット来日公演
19時〜 浜離宮朝日ホール
今日もヴェロニカさんの鼻息は大きかったですがそれはともかく、やはりこの団体は素晴らしい。四名が四名、独立した音楽家であることを如実に感じさせつつも、見事に一体的なアンサンブルを奏でている辺り、このクァルテットは只者ではありません。野性的なサウンドはサルビアホールよりも遥かに大きい浜離宮でも健在で、最初のハース(この四重奏団の看板曲!)から十全にポリフォニックな響きを堪能させてくれました。ドヴォルザークも各楽章の性格を描き分けていて見事。そして《死と乙女》は、えげつないほど楽想を抉っており、細かい所まで緻密にフレージングを構想した上で、それを情熱的にかき鳴らしておりました。もちろん今にも消えそうなppも完備してましたが、全体的には、覚醒し切った極めて意志的な演奏であったと思います。流される音符は一つもなかったんじゃないでしょうか。リズムを踏みしめるような箇所もいくつかあり、1stの主旋律に揺らぎを入れもしていたため、アンサンブルがほんの僅かにずれる所もありましたが、まあこれは実演だし、気にすべきところではないでしょう。こういう言い方は嫌いだし避けるべきだと思いますが、敢えて言いましょう。魂のこもった演奏でした。
アンコールも見事でしたが、これはパシフィカ・クァルテットの静謐な空気感の方が印象的だったかな。パヴェル・ハース・クァルテットは、温かな演奏でしたが、アンコール・ピースとしてこれだけ取り出して聴くと、やや微温的でした。まあこれはパヴェル・ハースが問題というよりも、パシフィカの清涼感がおかしいんですが。