不壊の槍は折られましたが、何か?

ミステリ書評家のブログのはずだが……。

東京交響楽団創立65周年記念特別演奏会

18時〜 テアトロ・ジーリオ・ショウワ

  1. ベートーヴェン交響曲第1番ハ長調op.21
  2. マーラー交響曲第1番ニ長調《巨人》

 マゼールが独自の弓使いを指定した楽譜を持ち込んだらしく、弦の出す音が両曲ともに興味深かったし、いつも以上に神経をすり減らす演奏だったろうに楽団員の皆さんも必死に食らいついており、見ていて気持ち良かった。しかし、演奏全体から見ると、オーケストラにとって指揮者マゼールが明らかなオーバースペックであったのは間違いないところだと思う。多少のミスとかそういうのは気にならなかったが、問題は、オケが目の前の音符を追うのに精いっぱいで、楽曲全体、楽章全体を俯瞰する視点が完全に欠けていたことだ。散発的に発生する素晴らしいサウンドは、ベートーヴェンの第1番がどういう音楽なのか、マーラーの《巨人》が何を表現しているのかを、一切感じさせてはくれなかった。もちろんこれは、マゼールが意固地な老人になってしまって、近視眼的な解釈しかできなくなった、という可能性は残る。残るのだが……。フィナーレのコーダでは金管(ホルンだけじゃない!)を起立させていて、サウンドも圧倒的に盛り上がってました。
 客席は沸きに沸いてました。前半からブラボーがかかりまくっており、マゼールも《巨人》を終えた後は満足気。一般参賀は1回。