マレイ・ペライア ピアノ・リサイタル
18時〜 サントリーホール
- J.S.バッハ:フランス組曲第5番ト長調BWV816
- ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第27番ホ短調op.90
- ブラームス:4つの小品op.119
- シューマン:子供の情景 Op.15
- ショパン:24の前奏曲より第8番嬰ヘ短調op.28-8
- ショパン:マズルカ第21番嬰ハ短調op.30-4
- ショパン:バラード第3番嬰ハ短調op.39
- (アンコール)ショパン:練習曲ホ長調op.10-3《別れの曲》
- (アンコール)ショパン:練習曲嬰ハ短調op.10-4
- (アンコール)シューベルト:即興曲変ホ長調D899/2
- マレイ・ペライア(ピアノ)
熟慮された解釈とふくよかなタッチの上に成り立つ、流麗なリリシズムに当てられっぱなしの二時間強でございました。どの曲も本当に豊かに、そして充実して響いてましたが、だからと言って細部が疎かとか塗り潰されたとかいったことはなく、痒いところまで手が届くように、細かい動きもほぼ完璧に表出されていて参りました。全体の流れも不自然なところは一切なく、曲の全てが聴き手の心に染み渡ります。なお、ショパンに至って、僅かの破調も辞さずに力強さを添加してドライブ感を増してましたが、これは成功であったと捉えたい。ショパンと他の4名は違う、というペライアの意思表明でありましょうし、この力感がロマンティックな風情をより盛り上げていたと考えます。ただし、この強力なドライブゆえ、指が回ってない面がほんの少しだけ感じ取れました。テクニック面での絶頂期はひょっとするとそろそろ終わりつつあるのかも知れません。まあ今日に関して言えばこれは些細なことでしたが。なお、アンコール最後のシューベルトが、ショパンの余勢があったのは妙にテンション強く弾かれていて微笑ましかったです。
こういう端正にして力強いピアノが弾ける人は、老若男女問わず、そうはいません。現役最高のピアニストの一人と言えましょう。
拍手は最初から最後まで盛大でした。ホールの照明が上がっての最後の呼び出しの際は、会場ほぼ総立ちだったんじゃないでしょうか。