不壊の槍は折られましたが、何か?

ミステリ書評家のブログのはずだが……。

ケヴィン・ケナー ピアノリサイタル

東京文化会館小ホール 14時〜

  1. ショパン:アンダンテ・スピアナートと華麗なる大ポロネーズop.22
  2. ショパン舟歌op.60
  3. ドビュッシー:版画
  4. ドビュッシー:喜びの島
  5. ショパン:私のいとしい人(リスト編S.480-5)
  6. ショパン:乙女の願い(リスト編S.480-1)
  7. シューベルト:糸を紡ぐグレートヒェン(リスト編S.558-8)
  8. シューベルト:セレナード(リスト編S.560-7)
  9. リスト:リゴレットパラフレーズS.434
  10. リスト:愛の夢S.541-3
  11. リスト:ハンガリー狂詩曲第2番嬰ハ短調S.244-2
  12. (アンコール)シューマン:献呈(リスト編S.566)
  13. (アンコール)ショパン夜想曲第8番変ニ長調Op.27-2

 ケヴィン・ケナーは、1990年のショパン国際コンクールで最高位(1位なしの2位)に輝いたアメリカ人ピアニストである。どの曲も大変充実した演奏で、楽曲の構成をがっちりつかんだ上でそれを骨太の美音で描き出して行く手法は、汎用性が極めて高い。珍奇な解釈は全くないが、逆に言えばどの場面も極めて自然、ルバートも完璧に決まっている。ハンガリー狂詩曲は本日のプログラムからはやや浮いていたし、超絶技巧で猪突猛進するよりは、美音による余裕を持った演奏の方がケナーの芸風には合ってるんじゃないかと思いましたが、それ以外の曲目に不満は全くありません。《愛の夢》とアンコールのノクターンにおける深い呼吸がとりわけ印象的でありました。
 客席は土曜日マチネのためか、ややざわついていた。ボケていると思しい老人が前半後半各一回ずつ、うーとかあーとか言ってたし鼻水すすり上げるのも遠慮なし。《版画》の《グラナダの夕暮れ》では携帯鳴らす人も。皆さん、気を付けましょう。