ユリアンナ・アヴデーエワ ピアノ・リサイタル
14時〜 東京オペラシティコンサートホール
- ショパン:舟歌嬰ヘ長調op.60
- ラヴェル:ソナチネ
- プロコフィエフ:ピアノ・ソナタ第2番ニ短調op.14
- リスト:悲しみのゴンドラII
- リスト:灰色の雲
- リスト:調性のないバガテル
- リスト:ハンガリー狂詩曲第17番ニ短調
- ワーグナー(リスト編):歌劇「タンホイザー」序曲
- (アンコール)チャイコフスキー:瞑想曲op.72-5
- (アンコール)ショパン:マズルカニ長調op.33-2
- (アンコール)ショパン:ノクターンホ長調op.62-2
- ユリアンナ・アヴデーエワ(ピアノ)
スケール豊かで力感に溢れ、しかし本当に実直に弾くアヴデーエワの演奏には、とても強い好感を抱きました。タッチも美しくて芳醇であり、プロコフィエフで見せるように切れ味も抜群、言うことは何もありません。多彩なプログラムでしたがどれも素晴らしく、非常に充実した演奏でありました。欲を言えばもっと飛翔するような、フワリとした音あるいはテンションの赴くままに弾くフリーダムな暴走が欲しかったようにも思いますが、多分この人は既存のショパコン優勝者の中だとツィメルマンに最も近いのでしょう。即興的な要素を求めることがそもそも間違いで、熟慮された解釈に基づく足腰のしっかりした、安定感抜群で中身も充実した音楽をじっくり聴くことこそが、聴き手最大の幸福に繋がるようなタイプの演奏家なのだと思います。ならば我々もそう接したい。
彼女は、ショパン国際ピアノコンクールで優勝後も変にアイドル化せず、極めて真っ当に成長しつつあるように見受けられます。ショパコンに優勝したからといってメジャー・レーベルと契約して華々しく人口に膾炙できるような時代ではもうありませんが、即座に人気が爆発しないが故のメリットもあるはずです。それを活かして、着実に地歩を固めていただきたい。