不壊の槍は折られましたが、何か?

ミステリ書評家のブログのはずだが……。

サルビアホール・クァルテット・シリーズvol.3

2011年7月4日(月) サルビアホール 19時〜

  1. ハイドン弦楽四重奏曲第39番ハ長調op.33-3《鳥》
  2. ツェムリンスキー:弦楽四重奏曲第4番op.25
  3. ベートーヴェン弦楽四重奏曲第8番ホ短調op.59-2《ラズモフスキー第2番》
  4. (アンコール)モーツァルト弦楽四重奏曲第14番ト長調K387より第3楽章
  • クァルテット・アルモニコ(弦楽四重奏
    • 菅谷早葉(1stヴァイオリン)
    • 生田絵美(2ndヴァイオリン)
    • 坂本奈津子(ヴィオラ
    • 富田牧子(チェロ)

 本来であればこの日はルガーノ・クァルテットが演奏するはずだったのだが、原発事故の影響で4月時点で早々に来日キャンセル。さすがは環境大国にして永世中立国スイスの弦楽四重奏団らしい、スバラシイ対応であると思いました。まあ怒ろうとは思わないけれど、ヨーロッパの原発が爆発したらこの馬鹿4人はどうするのか知りたいから是非爆発していただきたいぐらいの皮肉な思いは頭をもたげますね。
 というわけで、代役としてクァルテット・アルモニコが立つことになったのである。過日のクァルテット・エクセルシオ桐朋学園の人々で結成されていたが、こちらは東京藝術大学。だから何だというわけではないが、学生時代という若い頃から一緒にやっているということで、息のあった演奏が楽しめるのは一緒である。
 とはいえ、アルモニコは解釈面で本当に至って普通、はっきり言えば穏当に過ぎる。もっと攻めても良いのになあといったところが、特にベートーヴェンではモロに出ていた。フィナーレとか正直申し上げて退屈でした。アンサンブルが微妙にバラつく箇所が散見されたのも気になる。とはいえ、四奏者の粒の揃いっぷりはサルビアホールで聴いた四団体の中では随一で、誰が突出するでも引っ込むでもなく、全体としては良いハーモニーを聴かせていました。当夜の白眉は実演では滅多に聴けないツェムリンスキーで、ここは各奏者も力が入っており、見事な演奏であった。無調になる寸前で何とか踏み止まっているけれど、サスペンスまたはホラー映画のBGMにしてもおかしくないようなサウンドが横溢。これより先に進んだ音楽となると、明らかにベルクですよねえ……。