ラ・プティット・バンド来日公演
15時〜 東京オペラシティ・コンサートホール
- J.S.バッハ:ブランデンブルク協奏曲第2番 ヘ長調 BWV1047
- サラ・クイケン(ヴァイオリン)、バルトルド・クイケン(リコーダー)、尾崎温子(オーボエ)、ジャン=フランソワ・マドゥーフ(トランペット)
- J.S.バッハ:ブランデンブルク協奏曲第6番 変ロ長調 BWV1051
- サラ・クイケン、赤津真言(ヴィオラ)、シギスヴァルト・クイケン(ヴィオロンチェロ・ダ・スパッラ)
- J.S.バッハ:三重協奏曲 イ短調 BWV1044
- バルトルド・クイケン(フラウト・トラヴェルソ)、シギスヴァルト・クイケン(ヴァイオリン)、バンジャマン・アラール(チェンバロ)
- J.S.バッハ:ブランデンブルク協奏曲第5番 ニ長調 BWV1050
- バルトルド・クイケン(フラウト・トラヴェルソ)、シギスヴァルト・クイケン(ヴァイオリン)、バンジャマン・アラール(チェンバロ)
- J.S.バッハ:ブランデンブルク協奏曲第3番 ト長調 BWV1048
- (アンコール)J.S.バッハ:ブランデンブルク協奏曲第3番より第3楽章
ソフトで軽い、素晴らしく古雅な響きを堪能いたしました。見た目では、若手と中堅と大ベテランが混交している感じですが、出て来るサウンドはふわりとした、本当に優しく柔らかいもの。各ソリストも特段変なことはせず、非常に真っ当な奏楽でありましたよ――と言いたいところですが、各所で仕込まれる装飾音がとてつもなく軽妙洒脱。あとチェンバリストは明らかに変態。通奏低音要員として守るべきはしっかり守りつつ、ソリストとして前面に立つ時はちゃんと暴走している辺り、実に「わかってる」という印象でござった。ソロ・リサイタルやるなら行くな多分。チェンバロ&ヴァイオリン&トラヴェルソのトリオになったら、音量面で他の楽器を圧倒してしまうのも印象的でした。そしてマドゥーフのトランペット! 腰に手を当てて、指孔なしの楽器から、あっけらかんとした音を飄々と出す様に完全にノックアウト。まさしく名人芸である。そりゃ多少は音程ずれてましたけれど、それがほとんど気にならない。今でもあの音が頭に残ってますよ。あそこにいたのは、いかめしい顔付きの「音楽の父」バッハではなく、普通に喋って笑って時々踊っちゃう楽しいおっさんとしてのバッハでした。
ただし、私の座る席(3階Lサイドの30番台でした)の問題だろう、特にシギスヴァルト(ヴァイオリンにせよスパッラにせよ)の弱音が本当に蚊の鳴くような音にしか聞こえなかった。室内楽規模、加えて古楽器というアンサンブルには、1632席の箱はちょっとでか過ぎたのではないか。うーん、こういうことならチケット代けちらずに、もっと舞台に近寄った方が良かったんだろうなあ。ぐぬぬぬ。
なお、三重協奏曲の第一楽章中盤で、シギスヴァルトの弦が切れるというハプニングが。このためしばらくシギスヴァルトは舞台袖に引っ込んでました。出て来た後は第一楽章を最初からやり直し。ただ調弦が納得行かないのか(確かに最初のうちはシギスヴァルトの音は高めでした)、演奏中も頻繁に調弦してましたねえ。こういうトラブルに実際に出くわしたのは初めてですが、いやはや貴重なものが見れた。本当にバチーンって音がするのな。