不壊の槍は折られましたが、何か?

ミステリ書評家のブログのはずだが……。

サルビアホール・クァルテット・シリーズvol.4

19時〜 サルビアホール音楽ホール

  1. タイユフェール:弦楽四重奏曲
  2. ハイドン弦楽四重奏曲第39番ハ長調op.33-3《鳥》
  3. モーツァルトジュスマイヤー補筆、リヒテンタール編):レクイエムK.626(弦楽四重奏版)
  4. (アンコール)ショスタコーヴィチ弦楽四重奏曲第6番ト長調op.101より第3楽章レント
  • ドビュッシー・クァルテット
    • クリストフ・コレット(1stヴァイオリン)
    • ドリアン・ラモット(2ndヴァイオリン)
    • ヴァンサン・デュプレク(ヴィオラ
    • ファブリ・ビアン(チェロ)

 当初発表ではタイユフェールとハイドンの演奏順は逆でしたが、当日会場に掲示があり、上記の順番で演奏。
 前半は若干エンジンがかかっていなかった印象もありましたが、縦の線よりも音のブレンドと横の流れを優先する演奏スタイルであったのは確かだと思います。結果、かなりソフトな仕上がりに。タイユフェールのふくよかで繊細な味わいの演奏は耳に残りましたし、ハイドンは今時珍しいかも知れないグランド・マナーに近かったと思います。鳥の囀り云々の「音による戯れ」にもあまり顧慮していなかったような。また、四名ともに同格の演奏家であることをはっきり示すバランスで鳴っており、ストバイとチェロが目立つといった弦楽四重奏でよくあるパターンには嵌っていなかったように思います。
 後半は今回の日本ツアーで恐らくずっと弾いて来た曲ということもあって、前半いまいちと思った縦の線の精度が格段に向上、テンション面でも最初から全開。むろん原曲はオケ+合唱+四人の独唱で成立しているんですが、リヒテンタールの編曲が素晴らしく、物足りなさをほとんど感じさせません。Tuba mirum以降は完全に「弦楽四重奏曲」として成立していて、脳内で管弦楽や声楽を鳴らさないでもモーツァルトの音楽に浸れるようになっていました。各奏者も力演、中盤以降は涙腺が緩み気味に。素晴らしい。本当に素晴らしい。100席しかないホールなのに空席が目立ちましたが、来ている客も皆よくわかっていて、楽章間でも奏者が脱力するまで咳払いが控えられてましたし、最後の拍手も静寂を少し保ってから始まりました。
 アンコール前に、クリストフ・コレットがスピーチ。日本人聴衆への敬意と感謝を表明した後、震災のことに触れ、日本に来ることは自分たちにとって大事だったと述べた後、「日本と全ての日本人に」と、ショスタコーヴィチパッサカリアが奏でられました。レクイエムの後でも実にレクイエムっぽく響く音楽であり、雰囲気は全く壊されず良かったと思います。演奏も素晴らしいもの。この団体で他にも色々聴いてみたいので、また来日していただきたいです。
 なお、最近チェロの人が変わったらしい。そうだよなあ、数ヶ月前に見たチラシでは、チェリストは超絶ピザだったもんねえ。