不壊の槍は折られましたが、何か?

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ホータン最後の戦い―グイン・サーガ外伝15/栗本薫

《鬼面の塔》との戦いを制したグインは、結界を解き、遂にシルヴィア姫の眠る部屋に到達する。そこは巨大な宮殿で、謎めいた仮面の男が一行を待ち受けていて……。
 グイン・サーガをご存じの方には言うまでもないが、各巻は四話構成。本巻もその例に漏れず、《鬼面の塔》との戦いは第一話で早々に決着がつく。前巻で塔が呼んだ助太刀がとてもデカく、最後まで気の抜けないバトルをやってくれたのは嬉しいところであった。最後はちと呆気なかったが、《鬼面の塔》の今わの際はそれなりに威厳があるので良しとしよう。その後、久々に物語内で描写されるシルヴィア姫は、例によってツン成分が非常に多めで生意気盛り。マリウスの説得によって多少軟化した模様だが、恐らく非常に説明的な愁嘆が延々と続いたであろうその説得シーンを具体的に描かなかったのもナイス判断といえる。
 本書のポイントは、続く三話・四話で起きる《ホータン最後の戦い》が、グインvsグラチウスの枠組でおこなわれるものではないということである。なるほどこう来ますか。13巻でグインをサポートした青鱶団の面々との協力が再び前面に押し出されており、意外な助勢もあって、ホータンでの冒険はとりあえずの大団円を迎える。同時期のグイン本編は、ゴーラ騒乱を割とグダグダ描いているので、この幕切れで読者はスカッとしたのではないか。これぐらい明確な「ピリオド」は、グイン・サーガには長らくなかったわけだし。