星の船、風の翼―グイン・サーガ外伝8/栗本薫
星の船、風の翼―グイン・サーガ外伝(8) (ハヤカワ文庫JA)
- 作者: 栗本薫
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 1990/03/01
- メディア: 文庫
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幼い頃から両親の庇護もなく、冷遇に耐える日々を送ってきたアルド・ナリスにとって、クリスタル公となり自らの力を宮廷に認めさせるにいたる経緯はけっして平穏なものではなかった。そして兄を愛するがゆえに彼から離れていく弟アル・ディーン――これはふたりの若き日の物語である。
話の柱は二本ある。一つは、長らく雌伏の時代を送って来たアルド・ナリスが、クリスタル公に就くや、その実力と魅力の程を周囲に知らしめるというもの。もう一つは、弟アル・ディーンがとうとうパロから出奔するというもの。兄弟愛がしっかりあるにもかかわらず、当人の性格やら立場やらが複雑に絡み合い、相互理解ができぬまま別れてしまう悲しい展開が印象に残る。アルド・ナリスの美形っぷりがかなり強調されているのも特徴で、遂にはガチホモに狙われる始末。グイン・サーガでここまではっきりゲイが出て来るのは初めてではないか(アリストートスも今のところ*1明言はされていないし。変態であることは間違いないわけですが)。しかし栗本薫はこれらすべてを非常にうまくまとめている。「私が斬ったのはお前の過去だ」系のテンプレ発言は何とかして欲しかったが。でも口上の途中で刺されるから、これはこれで新しいのか。
ナリスとマリウスの若き日の印象的なエピソードとして、両名あるいはいずれか一名のファンならば必読だろう。
*1:36巻『剣の誓い』現在。