不壊の槍は折られましたが、何か?

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魔王の国の戦士―グイン・サーガ外伝12/栗本薫

 キタイの属領フェラーラから、キタイの古都ホータンへ転送されたグインは、貧しい子供ヴァニラや孤児グループ《青鱶団》の少年シャオロンを助け、その縁で青鱶団の協力を得ることになった。そして、シルヴィアが幽閉されているらしい《さかさまの塔》の所在を突き止めたグインは、一路救出に向かうが……。
 シルヴィア救出のための具体的荒事の準備巻と思われ、ホータンに行った→少年少女との出会いがあった→さかさまの塔でのちょっとした冒険、という小ぶりのエピソードでのみ構成されている。淫魔インキュバスユリウスとの戦闘は色々な意味でアレだし、シャオロンがグインに抱きついて眠るのも色々とアレ。ついでに、マリウスがユリウスに色々なことをされたとさらりと言うのも色々とアレ。ただしユリウスとの戦いは、グインの隠された前歴に起因すると思しい新能力が発揮されるなど、結構印象的ではあった。とはいえ全体としては「どうということもない」作品であるのは間違いない。結末を言ってしまうと、本巻で救出されるのはマリウスで、肝心のシルヴィアは別のところに捕えられているらしい。救出劇本番は、外伝の次巻以降で語られる模様だ。血沸き肉踊るアクション、あるいはグロテスクな地獄絵巻の展開があればいいな。
 以下余談。今岡清氏による解説は基本的に真っ当なものであるが、最後の最後に、意味もインパクトも全くないのに「(^^)」を使っていて、非常に悲しくなった。「なれの果て」という慣用句が脳裏に浮かんだことは否定できない。