不壊の槍は折られましたが、何か?

ミステリ書評家のブログのはずだが……。

フェラーラの魔女―グイン・サーガ外伝11/栗本薫

 シルヴィア姫を探して旅を続けるグインの前に、魔都フェラーラから来たという妖魔の小姓と人間の巫女のカップルが姿を現し、グインに助けを求めて来る。小姓は主のフェラーラの女王に寵を受けていたが、巫女と恋に落ちたことで、女王の怒りを買ってしまったというのだ。フェラーラを属国にしている大国キタイの竜王、そして魔術師グラチウスの陰謀を背後に見たグインは、大鴉ザザと狼王ウーラと共に、妖魔と人間が共存するフェラーラに向かうが……。
 中継ぎの巻で、ストーリー的には「外伝12に続くんですよね?」という感じで尻切れトンボに終わる。フェラーラでの冒険自体大したことはなく、女王リリト・デアや人蛇アーナーダの造形の気色悪さが印象に残るぐらいか。ザザは人型になっても「カー」と言っちゃう辺り、なかなか可愛い。亡霊たちにグインへの想いをばらされて、開き直るところもいい味出している。一方リリト・デアは、ザザと性格が似ていることをグインが観察した瞬間から、威厳も不気味さも完全に剥がれ落ちてしまい残念。グインをたらたら読んでてちょっと思い始めたんですが、ひょっとして栗本薫って、女性キャラクターのヴァリエーションが少ない? いや恋は盲目状態か、ヒスってるか、ナヨナヨしてるかの三択しかないので。
 ただしサーガ的には意味のある巻で、フェラーラの神殿に眠る猫頭の女神がグインのルーツの一端を明らかにするところである。ただし例によって勿体を付けたり途中で邪魔が入ったりして、はっきりしたことはわからない。これぐらいの巻でもう少しはっきりさせていたら、完結も不可能じゃなかったでしょうに。この無駄な引っ張りがいいんだよ、という感覚で臨むのが正しい読み方であるとは思います。