不壊の槍は折られましたが、何か?

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マグノリアの海賊―グイン・サーガ外伝9/栗本薫

マグノリアの海賊―グイン・サーガ外伝(9) (ハヤカワ文庫JA)

マグノリアの海賊―グイン・サーガ外伝(9) (ハヤカワ文庫JA)

 イシュトヴァーンは、宝島に隠された財宝を求めて、海賊一味を引き連れて南海にやって来た。そしてマグノリアの花が咲き乱れるダリア島で、踊り子ナナ、当地の大公の娘シリア、彼女の護衛ルネの三人と恋をする。
 というわけで、イシュトヴァーンは一応海賊ということになっているが、作品中、仲間はまるで出て来ない。主要登場人物は、イシュトと3名の女性、そして大公の5人で終わりである。そして話は本当に最初から最後まで、イシュトヴァーンがいかに女にモテるかを描く。王になる野望を燃やし、調子に乗ってカッコいいことを延々と喚き続けるイシュトヴァーンに、誰も彼もが惚れていくのだ。単にそれだけの巻であり、意味のあるエピソードでは全くない。文章は美しいので短篇だったら誉めたが、長篇でこれはなあ……。イシュトが好きで好きでたまらない人を除き、特に読む必要はなかろう。
 ただし唯一、イシュトがナナに求婚した事実は、本編におけるアムネリスの扱いと比較すると、趣が出て良い。