不壊の槍は折られましたが、何か?

ミステリ書評家のブログのはずだが……。

ピアノ・エトワール・シリーズ Vol.13 上原彩子

さいたま芸術劇場 15時〜

  1. ショパン夜想曲第7番 嬰ハ短調 作品27-1
  2. ショパン夜想曲第8番 変ニ長調 作品27-2
  3. ショパン:ピアノ・ソナタ第2番 変ロ短調 作品35
  4. ショパン:ワルツ第6番 変ニ長調 作品64-1
  5. ショパン:ワルツ第7番 嬰ハ短調作品64-2
  6. ショパン:12の練習曲 作品25
  7. (アンコール)チャイコフスキー:《18の小品》より《瞑想曲》作品72-5
  8. (アンコール)チャイコフスキー:《18の小品》より《五拍子のワルツ》作品72-16
  9. (アンコール)シューベルト:3つのドイツ舞曲より

 すまん最後のアンコールは俺初聴きで、会場の掲示からしか情報が取れなかった。
 当日が今シーズン最後の演奏会。この会場チケット代は安いんだけれど、自宅から遠いのが難ですね。あとホールが響き過ぎで、悪くはないけどピアノより弦の方が向いていると思うんだよなあ。今回についても音が飽和気味でした。
 演奏そのものは、コブシを随所に利かせた、なかなか面白いものであったように思います。「ヤマハ音楽教室出身」という経歴を文字だけで知ると、優等生っぽい演奏する人だと思ってしまいそうですが、実態は必ずしもそうじゃない。多少造形を崩してでも果敢に楽曲に挑もうとする姿は、飽くなき表現意欲の表れとして高く評価したいです。
 その一方、楽曲のアナリーゼが本当にこのままでいいのかと、素人耳のこちらにも疑問に思わせる瞬間が散見されるのは残念なところ。ワルツでリズムが重いのは、少々やり過ぎだったかも知れません。大柄な表現を目指すのはいいんですが、小回りがあんまり利いてない(これにはホールの音響も影響しているかも)のは、特にエチュード(練習曲)ではマイナスに働いていた場面がなきにしもあらずです。とはいえ、代わりに腹にずしりと響くものがありました。指回りでは彼女の上を行くピアニストは、恐らく国内限定しても少なくないはずです。しかし、この重いタッチはなかなか真似できないでしょう。まずは満足して会場を後にしました。……今後の課題は、ショパンチャイコフスキーシューベルトも同じように聴こえたという点かな。