絞首人の手伝い/ヘイク・タルボット
- 作者: ヘイク・タルボット,森英俊
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2008/05/08
- メディア: 新書
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事件とその謎の不気味さは実に強烈であり、それだけでたいへん面白く読める。とはいえ本格ミステリの世界の常としては、強烈な謎には反比例してしょぼい解決が付く、というのがあるので、最後まで読まないと安心できない。『絞首人の手伝い』にも残念ながら若干その傾向はあるが、しかしまだ踏み止まっている方ではある。伏線とトリックも、まずまずの出来栄えだ。不可能犯罪好きにはきっと満足いただけるだろう。
ミステリ以外の面では、登場人物の描き分けに注目したい。特に主人公のローガン・キンケイドの造形は要注意だ。彼は牢に入っていたこともあり、悪徳の雰囲気を纏いつつも効し難い魅力をたたえており、年少者からはかっこいいおじさまと見られる。こういった人物はノワールに出て来てもおかしくない。しかも本書では彼の過去も言及されルーツがある程度明らかとなるので、『魔の淵』と比べルト彼の行動原理とキャラクターがつまみやすい。
クラシック・ミステリ好きには要チェックの一冊だし、それ以外の人にも結構楽しめる。