スリープ村の殺人／ミルワード・ケネディ

スリープ村の殺人者 (SHINJUSHA MYSTERY)

　九月にしては暑い日、スリープ村の領主タイナン家でパーティーが盛大に催され、川で水泳する奴も出る中、手漕ぎボートで貸し別荘を目指す男がいた。だが、上陸した彼の前には司祭の死体が！
　古色蒼然*1とした本格ミステリ。イギリスの片田舎における典型的な推理ドラマと言え、漂うロマンス、名探偵登場の手順、各章の小見出し、ユーモアを交えた語り口、手堅い謎解きなど、全てが形に嵌っている。ゆったりしたテンポ、緩いリズムなども、クラシック・ミステリ特有の雰囲気を演出する。それらを越えて読者に迫るものは皆無なので、こういうのが好きな人が読んでおけばそれで良いだろう。ちなみに私は結構楽しかったです。たるいことはたるいけど、時々こういうのがたまらなく読みたくなるのです。質自体は悪くないので、安心して読めるのは素晴らしい。

*1:貶すニュアンスは含めていない。