新世界より/貴志祐介
- 作者: 貴志祐介
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2008/01/24
- メディア: 単行本
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- 作者: 貴志祐介
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2008/01/24
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上下巻で計1000ページあるが、長さを気にせずサクサク読める。このリーダビリティの高さは特筆ものだろう。SFということで身構える人もいるかも知れないが、そこは貴志祐介のこと、説明は非常にシンプルな上にうまく、「わけがわからない」状態に陥ることは決してないと保証しよう。子供たちの成長に同期するストーリー展開も素晴らしく、「一見のどか」な小さな町での生活は懐古的な情緒を醸し出し*2、感情移入もばっちり可能である。更に劇性の面でも全く問題なく、上巻も盛り上がるし下巻の展開は実に熱い。そして次第に全貌を現す《世界の真実》も、登場人物に感情移入できていたことも手伝って、かなりの衝撃が読者を襲う。本書は要するに、誰もが楽しめる娯楽大作なのだ。
敢えて欠点を挙げるとすれば、SFというジャンルに新生面をもたらす作品ではない、ということだろうか。作品内の道具立ては、いずれも既視感のあるものだ。しかし、それをここまでうまく料理し、かくも長いのに一切のダレを感じさせない作品に仕上げたのは素晴らしい。早くも今年度*3のベスト候補が登場した。今年は非常に幸先が良い。