不壊の槍は折られましたが、何か?

ミステリ書評家のブログのはずだが……。

そして赤ん坊が落ちる/マイクル・Z・リューイン

そして赤ん坊が落ちる (ハヤカワ・ミステリ文庫)

そして赤ん坊が落ちる (ハヤカワ・ミステリ文庫)

 ソシアル・ワーカーのアデル・バフィントンが事務所で残業していると、大男が窓から侵入してくる。彼はアデルをおとなしくさせておき、何件かのケース・ファイルのコピーを取り、去って行った。……ほどなく、幼い子を連れた若い母親が失踪するという出来事が連続して起きる。失踪前から、彼女たちの生活は何処かおかしかった模様だ。これには何か裏があるのか?
 アルバート・サムスンとリーロイ・パウダーを兄弟たらしめたアデル(アルバートの恋人)を主人公に据え、小さな子供がいる問題ある複数の家庭とその背後に潜む深淵を、リューインにしてはユーモアを抑え気味の筆致で、手際よく描き出す作品。主人公のアデルが非常にまともな性格をしているためか、ストレートな推理小説として読める。彼女の娘ルーシーとの交流も印象的で、アルバート・サムスンはやはり外部視点から描くとなかなかカッコいい。
 相変らずとても読みやすいし、ミステリとしても纏まっている(ただしそれ程手が込んでいるわけでもない)。またもや広くお薦めしやすい良作と言えるだろう。