不壊の槍は折られましたが、何か?

ミステリ書評家のブログのはずだが……。

豹の呼ぶ声/マイクル・Z・リューイン

 インディアナポリスでは、正体不明の連続爆弾テロ事件が起きていた。といっても、爆弾は毎回、爆発しないよう故意にセットされ、犯人側はマスコミを通じて自然保護等々を訴える。よって市民の間では犯人グループに同情的な空気も流れ、警察による捜査は難航していた。……一方で相変らず仕事がないサムスンであったが、この犯人グループを名乗る者から依頼が来てしまう。なんと、爆弾を盗まれてしまったので、取り戻してほしいということであった。サムスンが爆弾を見付けるまでは、新たなテロは起こさないという約束を取り付け、サムスンは捜査を開始する……。
 現時点におけるアルバート・サムスン最近作(訳出ベース)である。ファルスの要素がかなり強まっており、シチュエーション・コメディ的な場面も多々用意されている。しかし読み終わってみれば、なかなか遣る瀬無い情感にも事欠かず、従来からのリューイン・ファンにも楽しめる内容となっている。ファルスが徐々に、サムスンを追い詰めてゆく様はなかなかに興味深いし、事件の社会的影響度といった点ではシリーズ随一だろう。
 そしてやっぱり読みやすいし、ミステリとしての構成もうまいものなのである。というわけで、これまた広くお勧めすることができる。新作が待ち遠しいです。