不壊の槍は折られましたが、何か?

ミステリ書評家のブログのはずだが……。

男たちの絆/マイクル・Z・リューイン

男たちの絆 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

男たちの絆 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

 12歳の少年が、父親が消えたと失踪人課に訴える。この事件にパウダーはきな臭いものを感じる。なぜなら、少年の家には、父の写真・手紙・身元を示す書類などが一切なかったからだ。一方、車椅子のキャロリー・フリートウッド刑事は、インディアナポリス身体障害者の死亡率が、他都市に比べて高過ぎるという訴えを受ける。まさか、身障者のみを狙う殺人鬼が存在するのか……?
 その他諸々の事件も平行して、あるいは散発的に生じる、モジュラー型刑事小説。パウダーとフリートウッドを明快にキャラ立ちさせ、並みの作家ならば拡散させてしまうであろうプロットを牽引する役目を仰せ付ける。見事である。パウダーの息子が出所して、ワルではあるがそれなりに父親との仲を修復しているのも印象的。今回もやはり素晴らしい作品であった。
 現時点では『男たちの絆』がパウダー・シリーズ最近作ということになっているが、これで終わってしまうのは勿体ないので、新作を期待したいところだ。