不壊の槍は折られましたが、何か?

ミステリ書評家のブログのはずだが……。

ひよこはなぜ道を渡る/エリザベス・フェラーズ

ひよこはなぜ道を渡る (創元推理文庫)

ひよこはなぜ道を渡る (創元推理文庫)

 旧友のジョンの屋敷に招かれた、トビー・ダイク。しかし家にジョンの妻リリはおらず、そして彼自身は自室で死んでいた。部屋には弾痕や血痕があり、争った形跡もある。しかし死因は、持病の心臓病による自然死であった。そしていきなり現れる、同じくトビーの旧友、コンスタンス。彼女もまたジョンに請われて来たというのだが、何処か怪しげな様子である。一方、トビーの相棒ジョージは、いつにも増して事件への介入を嫌がるのであった。
 遂にトビー&ジョージのシリーズの全作訳出が完了した。今回も相変わらず、事件そのものに絶妙な捻りが加えられており、冒頭から読者の興味を惹く。高々300ページの割にはプロットも二転三転、おまけに筆致も簡にして要を究め、非常に読みやすい。登場人物の会話も小気味良く流れる。初心者からすれっからしの本格ヲタまで、幅広い層が十分楽しく読めるであろう作品だ。惜しむべきは、やはりこれで最後だということである。このシリーズ以外の作品も、今後出し続けていって欲しいが、セールス的にはどうなのだろうか。