サンドキングズ/ジョージ・R・R・マーティン
- 作者: ジョージ・R.R.マーティン,George R.R. Martin,安田均,風見潤
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2005/10
- メディア: 文庫
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以下、自分用メモ。オチには触れませんが、筋を中心にダラダラ書きます。
「龍と十字架の道」は、遠未来のカトリック神父が、カ=セイン人の大僧正の命を受け、ある惑星の異端を審問しに行く話。明確な起承転結があるわけではないが、基本アイデアを〈示唆に富む〉系の味付けで料理した一編。短編集のまずは上質なオードブルと言えるだろう。
「ビターブルーム」は、周期的に長い冬に襲われ、文明も中世レベルに低下してしまった惑星を舞台とする。集落から出て遭難しかけた一人の女性が、宇宙船を維持している女性に救われ(囚われ?)、生活を共にする。舞台設定を魅力的に描出し、それを人間ドラマと絶妙に絡み合わせる感じ。作者の腕を楽しむ作品であるともいえよう。
「〈蛆の館〉にて」も、遠未来、死にかけた太陽を持つ惑星での物語。人々は地底トンネル網の中で生活しているが、さらに深遠部に住む別の知的生物と敵対関係にある。例によって文明水準も低下しており、科学と宗教がごちゃごちゃになっている。この設定下、とある若者が祭典の日、地底を探検しに行く。探検ものとして非常にスリリングであるため、単純に楽しめる一品。巨大な虫の大群が気色悪くて素晴らしい。
「ファスト・フレンド」。宇宙空間に住む、光速を超えて移動する単細胞生物《暗黒体》は、人間と合体することができる。合体できた人間は、不老不死を得たうえ、光速で飛べるようになる。しかし失敗したら、その人間は宇宙の塵となってしまうのであった。で、あるカップルがこの合体を試み、女性の方は成功したが、男は直前で尻込みしてしまう……。物語は、この男がウジウジする様を中心に据えている。これを描くマーティンの筆が冴え渡っていて笑える。性欲・愛欲処理用のペット《天使》も、非常にいい味を出していて面白い。
「ストーン・シティ」は、ある惑星で以前栄えた文明の遺構に関する物語。マーティンの作品世界が広く俯瞰でき、非常に興味深い。非常に壮大な設定ですなあ……。
「スターレディ」はSFピカレスク。とある惑星に到着した金欠の美少年・美少女が、その惑星の裏社会に生きる男に拾われ、体を売って生きてゆく。そこに、裏社会の大ボスか絡んで……。SFならではの展開はほとんどないが、何も考えず筋を追うだけで楽しめる。
そして名高い「サンドキングズ」。面白いペットを飼いたい金持ちサイモン・クレスは、飼い主を崇拝し、かつ同種間で戦争をやってくれるサンドキングズを購入する。もちろんこの後、「しかし」と続く物語展開が待っている。ネタや起承転結も明快な、正統派ホラーSFといえるだろう。傑作。