不壊の槍は折られましたが、何か?

ミステリ書評家のブログのはずだが……。

調停者の鉤爪/ジーン・ウルフ

Wanderer2005-10-14

 『拷問者の影』ラストにおいて遂に巨大都市ネッソスの外に出たセヴェリアンの旅を中心にしつつ、作品世界を、ある程度明らかにしてゆく物語。もちろん全ての謎が明かされるわけではなく、相変わらず莫大な余白を残したままなのだが、作品の基本設定はかなりわかってくる。なるほどこれはファンタジイではなくSFであると納得する。
 その他は基本的に『拷問者の影』と同様の作品である。思わせぶりで、それでいて荘重華麗な表現で埋め尽くされる素晴らしいテキスト。個人的には何も言うことはない。というか、ここまで個人的に気に入ってしまえば、一片たりとも他の人にも言えるような話を書けるはずもない。素晴らしい傑作であると自分は思うことを、明確に打ち出したうえで今日は終わりとしておきたい。