不壊の槍は折られましたが、何か?

ミステリ書評家のブログのはずだが……。

ベルギー王立歌劇場管弦楽団

  1. ラヴェル:ラ・ヴァルス
  2. ラヴェル:歌曲集《シェエラザード
  3. ラヴェルボレロ
  4. リムスキー=コルサコフ:交響組曲シェエラザード》Op.35
  5. (アンコール)同上より第3楽章《若い王子と王女》

 オーケストラは非常に見事。ボレロではどのソロも万全だったし、アンサンブルの愉しさもばっちり感じさせた。何よりやる気があるのは素晴らしい。指揮者の意図もよく反映されており、楽曲の見通しが良い。指揮者・オケ共に常にひたむき。
 というわけで、基本的には好印象なのだが、真面目というか楽譜に向かって猪突猛進という感じなためか、どうも音楽に暗さが足りない。闇が足りない。夜の冷気が足りない。《ラ・ヴァルス》は破滅に向かう音楽のはずだし、リムスキー=コルサコフの《シェエラザード》は夜伽話のはずなので、もっと妖しくあって良いのではないか。《ボレロ》も、奏楽としては見事で文句のつけようがない。でも多種類の楽器の絡みとか、もうちょっと何かできはしなかったか。確かに、良いサウンドには満ち溢れていた。しかし、ハッとする瞬間は全くなかったような……。ないものねだりなんだろうなやっぱり。
 というわけで、人声の絡むラヴェルの《シェエラザード》が良かった。というか、独唱のベルナルディが実に素晴らしく、憧憬、多幸感、夜の気配、寂寥感をしっかりと表現していた。滅多に聴けそうにない曲だけに、感謝の念も一入である。
 以下、純粋に残念だったことを二点。まず、アンコールでオケの集中力明らかに落ちていた。これだったらない方が良い。曲の準備してなかったってことは、要するに最初はやる予定じゃなかったんですよね? 次に、リムスキー=コルサコフの《シェエラザード》で、大野が手を下ろしてないのに、バチバチ確信に満ちた拍手始めた馬鹿(多分三階席)が出たこと。曲の終わりを知っていることをそんなに自慢したいのか。でもラヴェルの《シェエラザード》は指揮者の腕が完全に降りるまで拍手しなかったよな。この半可通め。