不壊の槍は折られましたが、何か?

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斬首人の復讐/マイケル・スレイド

斬首人の復讐 (文春文庫)

斬首人の復讐 (文春文庫)

 『ヘッドハンター』の直系の続編と言え、ダイジェストが思い切り含まれている。『ヘッドハンター』を読んでいなくても本作を十分楽しめことはできるが、代わりに『斬首人の復讐』を読んだ後に『ヘッドハンター』を楽しむのは困難を極めよう。ネタバレだけでなく、ストーリーの全貌が全バレだからである。
 作品の内容は相変わらずいい意味でB級。シャーマニズムありトラウマあり人種対立あり《最後の一撃》あり……。原住民との軍事的とさえ言える衝突も描かれているなど、殺人事件の周辺事態も大変なことになっている。シリーズ登場人物が過去と対峙する様も重要なテーマとして扱われている。というわけで、暗い要素が強いのだが、過去作品と比べ全体的に軽い印象を受ける。キャット・ダークという少女(ディクラークと同居。怪しい意味ではない)が明るくて可愛いからか。萌え要素まで全開にしてくるスレイド、最早何がなんだか。
 とは言いつつ、最後はそれなりに落着させるのもまた、スレイドのセールス・ポイントだろう。
 あと、やはり熊はこうでなくちゃね。中から明智夫人が出て来るような熊はいかんのです。