東京フィルハーモニー交響楽団
- レイフ・オヴェ・アンスネス(ピアノ)
- ミハイル・プレトニョフ(指揮)
シベリウスは露払いという感じだったが、この段階で既に腰の低いずしりとした重量感を感じさせた。後の曲への期待がいや増すというものだ。いい開始だったと思う。
ラフマニノフにおけるアンスネスは、この曲に付き物の情緒纏綿、ロマンティックな情感を、完全無視ではないのだがあまり重視せず、音符の躍動・連なりを確固として打ち出していた。モンポウも同様。好みではないが、これはこれで面白かった。この人、EMIに所属しているため、今までの録音が悉くCCCD(誰が買うかボケ)であり全然聴いていなかったのだが、EMIもCCCDから事実上撤退したことでもあり、これからは注目すべきかも知れんない。個人的見解だが、ベートーヴェンとかこの人面白いのではないか。
さて、後半はそのベートーヴェンである。木管によるカデンツァ的な部分を中心に、時々音の引き伸ばしをおこない、また弦楽器に楽譜にない強弱をつけていたのが印象的。解釈の基本路線は、オリジナル楽器派の影響が見られず、大きな編成のオーケストラを使い、中庸のテンポで、低弦からピラミッド上の重量感あるサウンドを作り上げてゆくというもの。リズムも重い。この曲は、軽くやるか重くやるかで印象が様変わりする*1が、プレトニョフは《楽聖が書いたありがたい大交響曲》としての側面を強調していた。
総じて良い演奏会だった。プレトニョフがオケをよく掌握しており、ピアニスト出の指揮者に偏見がある私には少々意外でした。
*1:前者だと終始リズミカルで心浮き立つ楽しい音楽、後者だと第二楽章が葬送行進曲に転化し、両端楽章は怒涛の展開を見せる