天使のナイフ/薬丸岳
- 作者: 薬丸岳
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2005/08/09
- メディア: 単行本
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少年犯罪というテーマは正直食傷気味だが、作者はこれを極めて手際よく処理している。
主人公は被害者サイドにおり、当然のことながら怒り・憎しみを覚えている。しかし一方で作者は、少年更生サイドの紹介も怠らず、主人公にもその様をしっかりと見せる。特に中盤以降は極めて公平な態度を貫く。そして最後まで、《これが正しい》みたいな結論は言わない。少年犯罪をどのように扱うかという社会的テーマは、そのまま読者に投げかけられる。
以上で終了であれば、「なんじゃい普通じゃねえか」と言われよう。作者の真骨頂はむしろここからである。社会的テーマは確かに未処理・未決済である。しかし、主人公にとっての問題(=この物語)は解決してしまうのだ。読み終えた後、読者は何らかの爽快感を覚えている可能性が高い。凄く狡猾で、そしてうまいと思う。
この他、《意表を突く》と表現され得るミステリ的な展開も楽しめる。さくさく読めるので、割と広くお薦めできるんじゃないでしょうか。個人的には、もっと彫りの深い方が良いけれど……。