不壊の槍は折られましたが、何か?

ミステリ書評家のブログのはずだが……。

てるてるあした/加納朋子

てるてるあした

てるてるあした

 web上で他人様の感想をちらちら見ていると、読者はどうやら次の二種類に大別されるらしい。

  1. 『ささらさや』のサヤには感情移入できるが、『てるてるあした』の照代には最初のうち感情移入が難しい。
  2. 『ささらさや』のサヤには感情移入できないが、『てるてるあした』の照代には感情移入できる。

 サヤは常にいじらしく頼りなく、そして純真な心を持つ。一方照代は、ブスの自覚があるうえに親の愛情も信じておらず、しかもそこに両親の夜逃げ・高校入学不可の事態が出来したため、いじけてしまって文句ばかり言っている。一概には言えないものの、どちからというと、1の人はおめでたいし、2の人は屈折しているのではないかと容易に妄想できる。私はもちろん、どちらかというと2なのだが、それ以前にどっちも泣き虫だから嫌いなので、より救いがない。末期的かも。
 作品の出来自体は非常に良い。加納ファンと、いい話が読みたい人には自信をもってお薦めできる。