ルドルフ・カイヨワの憂鬱/北國浩二
- 作者: 北國浩二
- 出版社/メーカー: 徳間書店
- 発売日: 2005/05/21
- メディア: 単行本
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とまあ、最初のうちはハードボイルドっぽく始まる。そして最後まで一応ハードボイルド調は抜け切らないが、物語はなかなかスケールの大きい展開を見せ始める。全体としては結構骨太の小説であり、文章等の点からも作者は既に熟達している。新人賞に期待される初々しさや荒ぶりは強くないが、その分読ませる。テーマ(詳しくは述べませんが)にも絡むルドルフ・カイヨワの心傷とその苦闘もなかなか魅力的。ハードSFというよりは社会派SFという感じで、それがSFの新人賞としては引っ掛かったところなのかもしれないが*1、良作であることは間違いない。しっかりしたエンタメが読みたい人へ。
それはそうと、SFハードボイルドってことで、こんなことを思い出しました。「これがダメだったらもう一生SFは読まない」とか言ってハードボイルド要素の強そうなSFを、池上冬樹が絶賛したことを理由として手を出すハードボイルド好き、web上にいたなあ……。違うジャンルに臨む態度ではないと思いました。慣れ親しんだジャンルの文脈でしか読解するつもりないんなら、最初から外に出て来ないほうがいいと思います。
以上。
*1:大賞ではなく、去年の佳作なんだよな……。