不壊の槍は折られましたが、何か?

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名探偵は最終局に謎を解く/戸松淳矩

名探偵は最終局に謎を解く (創元推理文庫)

名探偵は最終局に謎を解く (創元推理文庫)

 江戸前ミステリ第三弾。単行本化は初めてとのこと、新刊扱いとして構わないだろう。
 相変わらず読みやすい上に、謎・解明・トリック・真相は手が込んでいて、マニアも満足できるだろう。殺人抜きだが明るいばかりでなく、暗い要素も感じられるのが好ましい。《稲田小僧》の見立ても、いかにもな感じで江戸前色豊かである。というわけで、本格ミステリ好きにはお薦め。

 とはいえ、聞くところによると、この作品元々、このシリーズじゃなかったらしい。あの三人組は後から主人公に擦り替わったそうだ。心なしか三人組が浮いているのは気のせいか。ただ、シリーズを順番に読んできた者にとって、主役の三人組以外に、『千秋楽』『九回裏』と共通する登場人物がいないのは、ちょっと不自然に映る。まあ些細なことですが。