不壊の槍は折られましたが、何か?

ミステリ書評家のブログのはずだが……。

本格推理委員会/日向まさみち

本格推理委員会

本格推理委員会

 ライトノベル風味の本格ミステリである。骨太ではないが、それなりの切れ味を見せるネタを据えて、主人公の克己を描く。話のキモはその道行きの楽しさだ。まず何よりも舞台とキャラが立っていて読みやすい。小中高一貫の私学、それもあり得ないほど楽しそうな学園を舞台に、個性的なキャラが活躍、軽妙で漫画チックな会話と共に物語はテンポよく進む。
 影や湿り気を適度に帯びているのも好ましい。また、よく考えてみれば決して薄い本ではないのだが、すいすい読めるので、それを感じさせない。作者の腕は確かと見た。

 〈きみとぼく〉を毛嫌いする人以外には楽しめるだろう作品。