不壊の槍は折られましたが、何か?

ミステリ書評家のブログのはずだが……。

馬鹿★テキサス/B・レーダー

馬鹿★テキサス (ハヤカワ・ミステリ文庫)

馬鹿★テキサス (ハヤカワ・ミステリ文庫)

 凄い邦訳タイトルである。そのまんま。

 とにかく変な奴ばかりで笑える。特にレッドとビリーのならず者コンビが最高で、致命的なまでにIQが低そうな、人間とは思えないほどのお馬鹿な言動が素晴らしい。黒幕たちの計画を破壊し、プロットに揺さぶりをかけて来る。そしてその黒幕たちも、頭が良いとは思えない。狩猟監査官である主人公たちも、その言動が全て正常とは言いがたく、唯一まともと思われる看護婦も、ジュリア・ロバーツにそっくりとか言われている時点で、やっぱり笑えてしまうのである
 とはいえ、プロットが破綻していないのは、作者が馬鹿ではないことの証しとなる。それに同じ馬鹿話でも、『ヴードゥー・キャデラック』とは異なり、何だかんだ言っても主人公が確たるヒーローである。またヒロインも、たとえジュリア・ロバーツにそっくりであっても、ヒロインらしい勇気と優しさ、愛らしさを忘れない。主人公サイド、つまり〈善〉の側にいる人々が自我を確立し、それなりの信念を持っているため、かっこ良ささえ感じられる。
 物語に一本筋が通っており、いくら馬鹿でも整った印象を受けるのはこれらのためであろう。

 というわけで、馬鹿好きにはもちろん、馬鹿を積極的に嫌う人以外にも広く薦められる一冊である。できることなら次作も読みたい。ぶっちゃけ、ローゼンフェルトよりも、こちらの方が気になる。