不壊の槍は折られましたが、何か?

ミステリ書評家のブログのはずだが……。

東京都交響楽団

  1. ベートーヴェン交響曲第5番《運命》
  2. シューベルト交響曲第8(7)番《未完成》
  3. ハイドン交響曲第45番《告別》

指揮は、ガリー・ベルティーニ

 ちなみに今月が、彼の都響音楽監督としての最終公演月間となる。従って、このプログラミングは非常に意味深だ。ハイドンの《告別》の作曲動機を鑑みるに、都響の予算を削り倒そうとする都知事への当てこすりとも解釈できる。故に、いつもなら私個人はまず付けない《運命》という副題を、込められた意図を慮る趣旨で付加した。ご理解を賜りたい。 

 演奏自体も素晴らしいものであった。特にベートーヴェンが鮮烈。速いテンポで一気呵成に仕上げられ、オケの鳴りも非常に良く、完成度が非常に高い。絞られた筋肉質の、緊縮タイプの演奏だと思うが、この曲にはぴったりである。なお、技術的にも昨日のシュターツカペレ・ドレスデンに見劣りしておらず、様々な意味で目覚しい演奏であったと思う。
 《未完成》の方も同傾向の演奏で、透明な叙情がなかなか乙であった。しかし、ちょっと素っ気無いと思ったのは、芸風だから仕方ないのか。なお、この曲から指揮者・オケ双方に技術的ほころびが見え隠れし始める。前半で疲れたのかもしれない。
 《告別》は舞台の照明を暗くして、オケの譜面立てに蝋燭形状の電灯がともされるという独特な雰囲気で始まる。曲の基本が短調、おまけに緩徐楽章も夜曲系なので、この演出はずる過ぎである。そしてフィナーレ、楽員が徐々に退場してゆくところでは、不覚にも感動してしまった。半分ほどは音楽があずかり知らぬところで感動したのだが。演奏自体は、特に第二楽章がちょっとずれていたりして残念。早い部分は良かったんですがね。

 ベルティーニはこの後、埼玉と横浜でマーラー交響曲第9番を振り、本当に音楽監督として去ってしまう。桂冠指揮者として、また都響を振りたいと言っているらしいが、予算を削られるオケに彼を呼ぶ余裕があるかどうか。事実、次回共演のスケジューリングはまだだそうだ。
 となると、これは来週出撃すべきなのだが、もちろん遠隔地ゆえ行けない。そしてこれを言い出せば、行きたいのに行けないコンサートは、他にもむちゃくちゃある。
 誰も私を侮辱していないのはわかっている。しかし敢えて言おう。これは私に対する個人的侮辱に他ならない。復讐を誓いたいが、誰にすればいいのだろうか?