酔いどれ探偵街を行く/カート・キャノン
- 作者: カートキャノン,Curt Cannon,都筑道夫
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2005/11/01
- メディア: 文庫
- クリック: 1回
- この商品を含むブログ (9件) を見る
その酒場はさびれた通りで、よく見かける、灯りの暗い共同便所そっくりだった。
都筑節炸裂。最初の一文から、読点の打ち方が生理的にダメ。しかし読み進めると、酒・女・暴力で荒々しく迫る落魄した私立探偵の物語としては、けっこう様になってくる。よってここでは敢えて問責しない。都筑攻撃はただでさえ神経を使うしね……。
物語の内容は、かなり他愛ないもの。全8編、一応サプライズはある。しかし手が込んでいるわけではない。また、女は唇奪われただけで例外なく抵抗をやめ、男の登場人物は言動がやたら粗暴。キングの『スタンド・バイ・ミー』等、アメリカ人作家が回顧的に少年ものを書く際、タフガイ小説を読んで主人公に憧れるガキ(でも言動が余りにもアレな感じの奴)がよく出て来るが、なるほど、年少期にこういうのに憧れたら、馬鹿にしかなれまい。
とはいえ、先述のように、落ちぶれ果て、それでもなおタフに生き、情にも篤いキャラ造形がなかなか印象的なのも間違いない。訳文も(読点が多過ぎるとはいえ)この手の話の限りにおいては、なかなか素晴らしいものだと思う。一読をお薦めしておきたい。