不壊の槍は折られましたが、何か?

ミステリ書評家のブログのはずだが……。

殺人者と恐喝者/カーター・ディクスン

殺人者と恐喝者 (ヴィンテージ・ミステリ・シリーズ)

殺人者と恐喝者 (ヴィンテージ・ミステリ・シリーズ)

 延々と絶版が続いていた、噂の長編。
 全編これぞカーター・ディクスン。この作家については、それで良いと思う。少なくとも今はまだ。というのも、結局のところこの作家は何を書いても同じだからである。ファンなら非常に楽しめるし、そうでなければ恐らくつまらない。これについては、いずれもう少しまともな感想を書く時も来るだろう。彼のストリーテリングに魅せられたファンは必読である。

 ただ誤解を避けるために付言すると、『殺人者と恐喝者』は、カーター・ディクスン=ジョン・ディクスン・カーの中でも上位に属す作品であり、なかなかの完成度というか読み応えがある。トリックもこの作家にしては珍しい種類のものを使っており、興味深い。その方面からのアプローチにも、これは耐えられる作品である。だからといって推奨の乱発をするつもりはないが。さらに付言すると、私の〈推奨〉とは特記なき場合、要するに初心者にもお薦めという意味であり、広範な推奨をしない=それほど面白くない、ということではない点にはよくよく注意されたい。