OUT/桐野夏生
- 作者: 桐野夏生
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 1997/07
- メディア: 単行本
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桐野夏生ほど《女であること》を赤裸々に描く作家も珍しい。代表作と目される『OUT』もまた、女性たちの情念が渦巻く非常にイヤな話になっている。家庭に問題を抱えつつも、一応暮らしている女たち。だが彼らは、さして親しくもないし仲間意識もないのに、弥生の殺人隠匿に助力し、死体をバラし、報酬を受け取り、その後は日陰者的行動をとる。何故そのような行動をとるのか、理由は明示されない。登場人物たちも、作者自身も明快には説明できないのかもしれない。だがしかし、この物語は圧倒的なリアリティーを持って読者に迫ってくる。登場人物の歪みが、恐らく誰もが程度の差こそあれ抱えるが、言葉にすると何かが変質してしまう、そういう心の闇の微妙な部分を、的確に捉えているからではないだろうか。
文章も読みやすく、全体のペース配分もよく考えられている。国産ノワールの傑作として、広くお薦めできる作品である。