不壊の槍は折られましたが、何か?

ミステリ書評家のブログのはずだが……。

零崎双識の人間試験/西尾維新

零崎双識の人間試験 (講談社ノベルス)

零崎双識の人間試験 (講談社ノベルス)

 あれ? なんか暗くないか? もちろん、元々それほど明るくもなかったし、それに今回も陰々鬱々とまでは行かないが……。

 と考えていて、はたと理由に思い当たる。ひょっとしてコレ、西尾維新初の三人称小説ですか?

 一人称の維新作品において、我々が面と向かえば良かったのは、極論すれば主人公だけだった。しかし今回は三人称であり、主要登場人物数名の中身に等しく入り込まされる(そう、内面描写について、西尾維新は三人称だからといって決して遠慮しない)。しかもこの数名がいずれも〈殺し名〉に関係する、日陰の生活を営む者たちなのである。また、物語自体、明らかに混沌の度合いを増している。シリーズ直近の『ヒトクイマジカル』と比べてさえ、話の骨子はぐちゃぐちゃだ。これまた〈殺し名〉ゆえと解するのが、作品世界に即して妥当だろう。いずれにせよ、西尾維新が〈いーちゃん〉を通して造営してきた世界、その一端を生で堪能できる。ファンは必読である。

 ただ、そろそろ私が付いて行ける限界に到達した観も強く、個人的にはもういいかもなんて思っている。と言いつつ、次も読むだろうが。