不壊の槍は折られましたが、何か?

ミステリ書評家のブログのはずだが……。

魔法人形/M・アフォード

魔法人形 世界探偵小説全集 4

魔法人形 世界探偵小説全集 4

 国書刊行会の例の叢書、その最新刊。オーストラリアのカーという謳い文句。魔術という装飾。悪い予感しかしなかったが、お布施と考えて購入。もっとも、国書のありがたみは最近低下しつつあるのだが。

 冒頭の記述者による一人称が「おいおい」と思うほど頭弱そうで、不安の極みだったが、幸い彼はすぐ姿を消し、事件には登場しない。代わりに、時代(30年代)や設定の割には大仰さのない文章に落ち着く。これがいい感じで、読んでいて心地良かった。トリックについて厳しい態度をとらざるを得ないのは、残念である。