不壊の槍は折られましたが、何か?

ミステリ書評家のブログのはずだが……。

過ぎ行く風はみどり色/倉知淳

過ぎ行く風はみどり色 (創元推理文庫)

過ぎ行く風はみどり色 (創元推理文庫)

 実は初読。

 厳格な祖父、おとなしい父、呑気な母、皮相だが嫌味じゃない叔父、活発な妹、純真な従妹、優しい家政婦、そして従妹の騎士を自認する主人公。よく考えると、この設定だと祖父だけ明らかに浮いているのだが、まあとにかく以上のような、金持ちだが皆仲は悪くない家庭に、下記の人物が乱入してくる。

  1. やたら偉そうな、霊媒
  2. 前項の出鱈目を暴こうとする、大学の若手研究助手コンビ。

そして交霊会だなんだとなり、その過程で不可能殺人が起きる。

 ユーモアタッチの筋運び、爽やかな青春模様、多数のいい人、ひねりの効いたネタなど、徹頭徹尾、いつも通りに倉知淳だと思う。極めて上質の本格ミステリであることには違いなく、大いに気に入った。なお、巽昌幸による解説は非常にいい。私の言いたかったことを文章にしてくれた感じ。ネタバレ解説ではないので、興味がある人は立ち読みしてください。