不壊の槍は折られましたが、何か?

ミステリ書評家のブログのはずだが……。

親友記/天藤真

 天藤真の魅力が横溢する好短編集である。ストーリーテリングとプロットを最大の武器に、《本格本格していない》芸風を基調にしつつ、しかし時にはいかにもな感じの屋敷ものを書く。ユーモアタッチの作品もあれば、最初から最後まで深刻な話もあるけれど、根幹には登場人物に対する温かい視線と、しかし彼らを美化する方向には決して行かない厳しいスタンスが混在して存在する。
 個人的には「親友記」「なんとなんと」「犯罪講師」「鷹と鳶」「夫婦悪日」「穴物語」「誓いの週末」がお気に入り……って7/9やないか。高水準のアベレージヒッター、恐るべし。
 というわけで作品については以上なのだが、《宝石》誌に応募した「親友記」「塔の中の三人の女」の、選考評が色々と興味深い。城昌幸水谷準は、事これに関しては馬鹿だとしか思えない。自分の《ミステリはこうであるべき》という思い込み他人に押し付けるなって。乱歩はさすがに短評でも鋭い。そんな感じです。