真珠郎/横溝正史
- 作者: 横溝正史
- 出版社/メーカー: 扶桑社
- 発売日: 2000/10/01
- メディア: 文庫
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「真珠郎」
戦前の横溝には珍しい(らしい)本格ミステリとして立派なもの。首のない死体がメインだが、これが結構うまく考え抜かれている。感心しました。金田一デビュー後の諸作に比べると筆が若いが、ここではその若さも含めて楽しめる。主人公の当事者意識の強さは『八つ墓村』以上なので、ここら辺も読みどころの一つかと。
「蜘蛛と百合」
ただの因果譚。作品単体には何の興味も湧かない。ただし、戦後の横溝作品でも延々と繰り返される《因果》というテーマが、生の姿で示されていることは非常に参考になる。
「首吊船」
人形、怪人、満州、隅田川での捕り物……いかにも戦前臭い短編探偵小説。嫌いじゃないけれど。
「薔薇と鬱金香」
因果譚でしかないその二。無茶な薬が出て来るのはご愛嬌として、珍しくそんなに陰惨ではなく、無邪気に楽しめた。コアなファンにとっては物足りないかもしれないが。
「焙烙の刑」
回りくど過ぎる犯罪計画だが、まあその辺は目を瞑るべきなのだろう。犯人の狂気は印象的だし。
なお、全五編ともに、由利がうざい。探偵役が邪魔でしかないのは昔からだったらしい。