宇宙怪人/江戸川乱歩
- 作者: 江戸川乱歩
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 2004/04/14
- メディア: 文庫
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惜しいのは、結局のところこれがミステリであり、日常に引き戻されて終わってしまう点だ。夕映え時にヘリコプターをからかう一群の宇宙怪人とかのヴィジョンは、トリックとして捨てるにはあまりにも惜しい。この大風呂敷を畳まずに、本当に宇宙から怪人がやってきたことにして、侵略SFとして少年探偵団と明智小五郎の活躍を描いたらどうなっていたのだろう。ものすごく面白い小説になっていたと思うのだがどうか。
そもそも、乱歩がSFを書いたらどうなるのか、非常に見てみたい。戦前はミステリもホラーもファンタジーもSFもごっちゃであったはずで、ならば、その当時から執筆活動を続けている大家が、ミステリ作家であると同時にSF作家であってくれても良かった。
「畸形の天女」は、合作の劈頭として、お得意のナチュラルな悪女を据えた作品。結構熱が入っていて楽しめる。思わず続きが読みたくなってしまった。
「女妖」も同様の合作の劈頭だが、「畸形の天女」ほど力を込めておらず、普通に流している。とはいえ、猫の頭を潰したことを思い出すシーンは、なかなか引きがうまい。