不壊の槍は折られましたが、何か?

ミステリ書評家のブログのはずだが……。

カンタベリー物語 料理人の話/チョーサー

料理人の話の序

料理人は家扶の話に大受けし、自分も冗談話をすると言う、宿の主人は、料理人が材料を減らしていること、余り物を温め直して何度も出すこと、客の巡礼が腹を壊していること、店に蠅が飛び回っていることなどを、冗談めかして指摘する。料理人は、自分の話が宿の主人のことであっても怒らないでくれ、でも別れる前にはきっと宿の主人に仕返しをすると言い、笑って、話を始めた。なおここで、宿の主人の名がハリー・ベイリーであることが明かされる。実在の人物で、結構な大物だったようだ。恐らくチョーサー自身の知り合いでもあっただろう。

料理人の話ここに始まる。

話の内容はこんな感じだ。料理人の街に、食料品やの徒弟パーキンがいた。彼は遊び人であり、店のお金を盛大にちょろまかしていた(金庫が空になったこともあった模様)。店の主人つまり彼の師匠は、パーキンをクビにする。暇になったパーキンは、遊び仲間の元に荷物を送る。この仲間は妻帯者だった。

……というところで話は唐突に終わる。未完なのである。ストーリーは動き出しすらしていない。なぜ未完に終わったかは学説上の議論があるらしい。序のパートで、料理人が話の中で宿の主人をやり込めることを示唆するが、もちろんそれも果たされないまま終わる。面白いかどうかを感じる前に話が絶たれるので、評価も不可能。