不壊の槍は折られましたが、何か?

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ヘルベルト・フォン・カラヤン/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団 シューベルト:交響曲第9番ハ長調《グレイト》

 1968年9月、西ベルリンのイエス・キリスト教会でセッション録音されたもの。カップリングは、同一会場で1964年10月収録の《未完成》である。
 同コンビによる後年の1977年盤と基本的には同傾向の演奏である。すなわち、ベルリン・フィルの重厚な音色と高い機能性を駆使しての、レガート主体・スケール豊か・強い推進力・見事な木管ソロ・豪壮華麗、といった具合の演奏である。表情付けがより素直であり、ストレートな表現になっていて、よりさっぱりしていると言えます。これをどう捉えるかが、好みの分かれ目になるだろう。オーケストラの鳴りも、77年盤に比べるとより素朴である。個人的にはよりカラヤンの個性が明確に刻まれた77年盤を好むが、ドイツ・グラモフォンの録音がベルリン・フィルをオンマイク気味に細部まで明瞭に録っていることもあり、日によってどちらが好きか変わる可能性が高いような気はします。
 カップリングの《未完成》も良い。重厚でがっしりした音響をベースに、ベルリン・フィル木管群が素晴らしい歌を歌ってくれる。こちらも70年代のEMI交響曲全集に入れた《未完成》に比べればストレートな表現になっています。ただし《グレイト》と異なって、《未完成》の場合は、70年代のEMI録音における耽美的な表現が忘れがたく、個人的好みで言うと、日替わりすることなく70年代盤を選ぶことになります。