不壊の槍は折られましたが、何か?

ミステリ書評家のブログのはずだが……。

新国立劇場

新国立劇場:14時〜

  1. ワーグナー:楽劇《ラインの黄金

 トーキョー・リング再演の初日。今後1年をかけて、残りの3作品も再演されます。
 笑いとシリアスがめまぐるしく交錯する演出で、非常に面白かったです。ラインの黄金と、エルダの登場箇所がジグソーパズルのピースの形をしており、それらが数式で彩られていたのはなかなか興味深かったです。終盤で、ノートゥングがローゲからヴォータンに差し出されるのはいい演出だったと思われます。神々は最後の最後で白の正装で登場。ローゲのみ、初登場から一貫してマジシャンのような黒の衣装でした。ときどき手品っぽいこともするし、トリックスターとしての性格が強調されていたように思います。最後の最後で、ワルハラ(を表す舞台奥の真っ白な空間)に向かう神々に同行せず、手の平で火を燃やし悠然とタバコを吸っていたのも印象的でした。
 黙役として、ニーベルハイムにてアルベリヒに抱かれる娼婦(っぽい)美女が登場。やたら乱暴に抱かれてましたな。そしてアルベリヒは、ヴォータンに捕まって解放される際、自分の股間を刀でグサグサ刺してました。ということはこれ以降子供は作れないわけで、となると黙役のねーちゃんはハーゲンの母親か? 彼女はミーメにも言い寄っていたし、再登場する可能性は高いと見ました。
 なおこの演出では、ワルハラ披露の宴のため、仏教・ヒンドゥーキリスト教神道ギリシャ・エジプト・(あと一つは何だろう?)の神々が招待状片手にやって来るのは有名ですが、ラインの乙女たちの神々への糾弾が全員に聞こえているというのは面白く感じました。「観客の神々も他人事ではない」と言われているような気がしましたです。
 歌手たちも演技はちゃんとしてました。最近は歌手も芸達者でないとオペラの仕事を請けられないということでしょう。声の面で陥没点がなかったのは良かったです。指揮も非常に手堅く、どういう音楽かはっきりわかるものだと思いましたが、正直演出に気を取られて、そこまで注意が払えない。ただし、そんな耳にもオケが機能面で万全と言いがたいのはわかりました。ホルンがこけるのは様式美ですからまあいいとして、アインザッツが随所でずれるのはちょっとなあ。特に金管
 とはいえ、全体的には非常に満足しました。《ワルキューレ》以降も期待します。