Y氏の終わり/スカーレット・トマス
- 作者: スカーレット・トマス,牧野千穂,田中一江
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2007/12/14
- メディア: 単行本
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SF+幻想小説+サスペンス+哲学小説+寓話、というこれまた結構な無茶をやらかす作品である。各要素の比率はこれまた等配分。今月の早川はこんなんばっかかい。しかし『Y氏の終わり』は全てが非常に/とても/圧倒的に丁寧な作りで、強引な印象を抱く人は稀であるはずだ。基本的に物語はヒロイン・アリエルを追うのだが、アリエル自身のリアルかつ落ち着いた人間描写を貫徹する一方、緻密でスケールもなかなか大きい世界観を提示する。この二つをかほど見事に両立させた作者の筆力には、素直に脱帽である。非常に自然に読み進むことができるのだが、冷静になって考えてみると、あの冒頭からこんな展開は予想できません!
読み応え抜群であると同時に、非常に読みやすいのも嬉しい。これには訳文の功績も大であるが、とにもかくにも素晴らしい作品だ。小説好きは必読の傑作といえよう。